清掃実施マニュアル
はじめに
私たちが日頃、何気なしに利用している水は、そのほとんどが水道水である。細菌汚染、重金属等の汚染の不安を抱くことなく、日常の生活において、蛇口を開放すれば新鮮で豊富な水が安心して飲める。このことは、水道事業者の安全な水を安定供給するための取組や、設置管理者や利用者の理解に負うところが大きい。
私たち貯水槽清掃に携わる者は、こうした水道事業者から供給された水を一時貯め、各戸に給水する貯水槽施設について、国の法令や自治体の指導要綱等に基づき、設置者に代わって清掃・維持管理を行う役割と所謂、メーター以降の水質維持の責任の一端を担っている。
(一社)新潟県貯水槽管理協会は、より安全で適正な方法で作業を実施することによって、設置者の皆様に信頼と満足をいただけるよう、作業の条件を明記し、清掃作業の実施マニュアルとしてまとめた。このマニュアルは、建築物衛生法、水道法、建築基準法等の法令のほか、新潟県及び新潟市で制定したそれぞれの「貯水槽給水施設の衛生管理指導要綱」等の規定に従い、また、法令等に規定がないものは、当協会独自で定めたものである。
なお、建築物の環境衛生の確保や公衆衛生の向上という公共性の観点から、これを公開することにより、会員のみならず広く一般に活用されることを願うものである。
特 徴
提 出 先 | 貯水槽清掃 報告書 |
水質検査 成績書 | 清掃前後の写真 | |||
受水槽 | 高置水槽 | |||||
1 | 設置者又は設置者の代理人(管理者) | 正本1部 | 正本1部 | 1部 | 1部 | |
2 | 新潟県貯水槽管理協会 | 正本2部 | 正本2部 | 必要時 | 必要時 | |
内訳 | (貯水槽管理協会データー用) | (正本1部) | (コピー1部) | |||
(保健所・水道事業者へ提出用) | (正本1部) | (正本1部) |
① 清掃は、1年以内ごとに1回、定期的に行う。(注:1年ごとに1回ではない。)
② 修理、入替、新設の場合も、必ず清掃を行う。
③ 地震、断水、減水、濁水、長期滞水、その他異常があった場合、必要に応じて行う。
(2)清掃の定義
清掃とは、沈殿物質および壁面等の不着物質の除去、槽壁等の点検、腐食物の除去並びに貯水槽への 異物の侵入防止措置、塗装等をいう。
(1) 作業班の編成
① 貯水槽清掃作業監督者又はそれと同等の者を責任者とし、原則として3名以上からなる作業班を編成の上、清掃を行う。
② 貯水槽施設、付帯設備の修理等がある場合や塗装作業がある場合のほか、清掃条件により必要に応じて増員する。
(2) 貯水槽清掃作業監督者の役割
① 貯水槽清掃作業監督者は、作業従事者の指導監督を行い、清掃作業を衛生的かつ的確に実施する。
② 貯水槽清掃作業監督者とは、(公財)日本建築衛生管理教育センター(旧「ビル管理教育センター」)の講習の課程を修了した者をいう。
(3) 貯水槽清掃作業従事者の研修
① 貯水槽清掃作業従事者は全員、知識・技術・技能を高めるため、毎年度、法令で定める研修を受けた者でなければならない。
② 厚生労働大臣登録資格者(貯水槽清掃作業従事者研修登録機関)の当協会が毎年度、集合研修により開催する貯水槽清掃作業従事者研修会は前項の3名以上の受講を研修の参加条件としている。
(1) 貯水槽の清掃作業を行うため、次の機械器具を整備する。
① 法律上の物的要件
イ 高圧洗浄機
ウ 残水処理機
エ 換気ファン
オ 防水型照明器具
カ 残留塩素測定器
キ 濁度計
ク 色度計
ア 酸素濃度測定器
イ 200V対応テスター
ウ 搬送型発電機および感電防止漏電遮断機
エ 安全装備類
オ 工具類
(2) 機械器具は、貯水槽清掃に専用のものとし、他の作業に使用してはならない。
(3) 上記の機械器具等を適正に保管するため専用の保管庫を設ける。
保管庫は衛生的に保管できる構造とし、独立の鍵を掛け、みだりに機械器具等を持ち出せないようにする。
(1) 機械器具等を管理する責任者は、貯水槽清掃作業監督者が担当し、常に点検整備を行い、その状況を記録・保管する。
(2) 当協会の点検整備方法は、別紙②の様式を準用する。
(1) 健康を保持し、清掃日前日の入浴、作業直前の手足などの洗浄及び消毒を励行する。
(2) 全従事者は、6か月以内に1回検便、その他健康診断を行い、結果を1年間保管する。
(3) 伝染病病原菌の保菌者及び作業当日健康状態不良(下痢、発熱等)の者は、作業に従事させてはならない。
(4) 検便は、貯水槽管理水質検査連絡協議会員の指定検査機関等に依頼する。
( 参考:新潟支部会員の全従事者の検便は、支部負担で9月、3月に一斉検査を実施)
(1)貯水槽の適切な清掃を行うため、設置者と十分打合せを行い、次により事前点検を行う。
① 給水施設図面等により、その構造、配管、電気配置等を確認する。
② 貯水槽周辺の状況、不衛生なゴミの有無等を点検する。
③ マンホールの施錠の有無や汚水、雨水等の浸入の有無を点検する。
④ 水抜管及びオーバーフロー管の排水口空間、吐水口空間を点検する。
⑤ 水抜管、通気管及びオーバーフロー管等開口部の防虫設備を点検する。
⑥ 貯水槽内部に異物が沈殿し、又は付着していないか等内部状態を点検する。
⑦ 貯水槽の水漏れ、外壁の損傷等を点検する
⑧ 各種機器の作動状態を点検する。
( ボールタップ・満減水警報装置・フロートスイッチ又は電極式御装置・給水ポンプ・フート弁・塩素滅菌機等)
⑨作業場所の安全性を確認する。
(2) 前項i①~⑨の確認・点検に基づき、工程表を別紙④様式で作成する。
清掃作業に入る前に次の点に十分注意する。
(1) 作成した工程表を、設置者等に周知する。
(2) 塗装を必要とする場合、乾燥は天候に左右されるので強制乾燥機の準備をする。
(3) 貯水槽清掃作業の機械器具は専用とし、使用前に必ず洗浄消毒を行う。
(4) 代用貯水槽の設置又は、給水系統の仮設配管等にあたっては、クロスコネクション等により相互汚染を起こさないようにする。
(5) 安全処置の確認は次のとおり行う。
① 安全対策として、作業に着手する前に、どのような危険があるかを各自で確認し、ヒヤリ、ハットを全員で常に研究しておく。
② 酸素欠乏.有毒ガスの充満.塗装の有機溶剤中毒等の防止のための換気装置の確認を行う。
③ 感電防止のため、電気配線の安全性の確認を行う。
④ 塗装時、有機溶剤等による爆発事故の防止のため槽内での火気の取扱いの注意及び電気接点等の点検を行う。
⑤ 作業用仮設物の安全の再確認及び作業従事者の危険防止のため防護措置の確認を行う。
⑥ 特に高置水槽等は、安全ベルト及び命綱等を確実に装備して、滑落、墜落等の自身の事故と人身事故等による設置者、一般住民の方々への迷惑の防止に努める。
第8 機械器具の洗浄と作業衣等の消毒及び貯水槽周辺の消毒
(1) 作業衣の着用は、原則として作業現場において行う。
(2) 専用の作業衣は、その都度消毒、クリーニング済のものを使用する。
(3) 清掃用機材を車両から降ろし、専用の養生シートの上に整理する。
(4) 清掃用洗浄水及び消毒用100㎎/㍑・50㎎/㍑の消毒液を用意する。
(7) 作業員は手足を石鹸で洗い消毒する。
(1) 清掃前に給水栓末端の残留塩素濃度を測定し記録する、同時に臭、味、色、濁りの有無を確認する。
(2) 受水槽の入水バルブを閉める。
(3) 受水槽に排水弁のある場合は、弁を開き排水する、この場合、必ずマンホールを開放して置くこと。
(4) 排水弁の無い場合は、揚水ポンプ(排水ポンプ)を使用して排水する。
(5) 内部清掃は次の手順で行う。
① 前記第8の(6)により周囲を消毒した水槽に、前記第8の(5)のヘルメット、 マスク、手袋、長クツ等を装備して入槽する。
(この場合、足洗い槽の消毒液は次亜塩素酸ソーダ100mg/㍑溶液として、槽は出来るだけマンホールの近くに設置する)
② この時、外部から昆虫や異物が入らないように注意する。
③ 清掃前の汚れ状況を写真撮影する。(清掃後の撮影に備えて、撮影アングルを覚えておくこと)
④ 高圧洗浄機、スポンジタワシ等で壁面の水あか、鉄、バクテリア等の除去を行う。
⑤ 汚れのひどい時や落ちにくい時は、貯水槽専用洗剤を使用して確実に落とす。
⑥ 槽内の給水管、その他機器の錆落とし及び点検を行い、必要に応じて取り替え又は補修する。
(特にボールタップ。満減水電極帯及びフート弁の点検は確実に実施すること。)
⑦ 槽内部の水、汚泥等を残水処理機を用いて完全に除去する。
⑧ 最後に天井部分、側壁部分、底面の順番で高圧洗浄機による噴射洗浄を行い汚れを完全に洗い流す。
⑨ 清掃後の写真撮影をする。(清掃前撮影のアングル同じにすること)
⑩ 清掃後水槽内の消毒開始前には、槽内に作業用具部品及び異物等の置き忘れの有無の確認をする。
⑪ 洗浄後、布等できれいに拭きとり次亜塩素酸ソーダ100mg/㍑溶液で消毒し、その後30分間以上放置する。
⑫ 放置後、もう一度槽内部の水洗いを行い再度きれいに拭きとり、次亜塩素酸ソーダ50㎎/㍑溶液で仕上げ消毒を行い、更に30分間以上放置する。
(7) 消毒後30分以上経過してから再度水洗いをしてから水張りを実施する。
(8) 清掃作業は、受水槽、中継水槽、次に高置水槽の、中間水槽の順番とする。
(9) 水槽周辺清掃を行う。
(10) 掃除によって生じた汚泥等の廃棄物は、法令に基づき適切に処理する。
(11) 貯水槽の報告書に添付する清掃前後の写真は確実に撮影すること。
第10 使用する消毒薬剤の名称及び使用方法
消毒に用いる次亜塩素酸ナトリウム液は日本工業規格及び日本水道協会規格に適合したものを使用する。
第11 作業後の貯水槽の点検手順
(1) 配管の空気抜きを行い、各階の末端給水栓から水が出ることを確認する。
(2) 自動機器の正常な作動、停止を見届ける。
① 警報装置の停止確認と警報停止ボタンの復帰確認
② 液面制御装置の作動確認
③ 揚水ポンプの自動発停確認
④ 塩素滅菌器の逆流止めの玉弁及びサイホンブレーカーの作動状況等
⑤ 満水停止の確実な確認
(上記⑤の確認を怠ったことにより、漏水事故が発生し、設置者や入居者に甚大な被害を与え、その清掃業者は信用を失墜した事例があるので特に注意を要する。)
第12 作業終了後の水質検査
(1) 貯水槽満水後、貯水槽清掃作業監督者は、各階の給水栓を開放し、十分放水した後、給水栓末端の水について次の項目を検査し、異常の無いことを確認する。
① 濁 度 2度以下(濁度計にて)
② 色 度 5度以下(色度計にて)
③ 遊離残留塩素 0.2㎎/㍑以上(残留塩素測定器にて)
(結合残留塩素で1.5㎎/㍑以上)
④ 臭 気 異常でないこと
⑤ 味 異常でないこと
(2) 検体の採取と検査はできるだけ設置者等の立会いを求めて行う。
(3) 清掃後、速やかに(原則48時間以内)、協会指定の水質検査機関の技術者が検体を採水し、水道法に規定する水質検査を実施する。
第13 作業報告の作成手順及び報告書の保管
(1) 水質検査機関から、水質検査成績書が届いたら、下記の報告書を作成する。
(2) 次の内容の報告書を作成し設置者及び協会にそれぞれ提出する。
① 建築物の名称、所在地、建物の規模
② 建築物の所有者の住所、氏名
③ 清掃作業の年月日、天候、断水時間
④ 貯水槽清掃作業監督者の氏名
⑤ 清掃作業従事者の氏名と人数
⑥ 槽の位置、材質、容量と有効容量
⑦ 槽内外の点検結果及び補修状況
⑧ 作業内容の説明
⑨ 使用薬品と稀釈濃度及び消毒回数
⑩ 塗装を行った場合は、その材料名と塗装方法
⑪ 所見(提言事項等)
⑫ 作業の前後を撮った写真
⑬ 検査機関に依頼した水質検査の成績表
(3) 協会は、提出された報告書のデータ―保存の完了後、当月分を翌月末日までに関係水道局、保健所に送付する。
(4) 清掃作業報告書の保管は、貯水槽清掃作業監督者が行う。